YAYA

小説を書く用のブログです。いつか出発することを目標にしています。

Sustainable blood

月光に照らされたステンドグラスが鮮やかな影を落とす教会の中央で女性は自分を呼び出した主を探していた。手の中には自分の1歳にならない子供がすやすやと眠っている。 薔薇の花びらが舞い上がり、呼び出した者が姿を表した。女性はおずおずと眠っている我…

特別プログラム2 firework of titan

赤や青の花火がサーカス小屋の真上を鮮やかに彩る。全てのショーがクライマックスに達した合図だ。観客はその日の感動の終止符として花火を見上げ、思い出を噛み締める。 サーカスの団長、ミラーボールは円形のステージの真ん中に立つと、シルクハットを脱い…

特別プログラム1 人形師の願い

赤い靴を履いた足が自分の意思とは関係なく、踊り続けている。足は止まりたいのに勝手に前に進んでいく。これまで踊り続けていたのは自分の実力なんかじゃなくて、靴が凄かっただけなんだ。 いつもと同じ夢から目が覚めると、そこは寄宿車両の中だった。隣の…

ヴォーダン・ゲーム 後編

乾いた集落の一体にぽつぽつと雨が降ってきた。雨水は乾いた大地を潤し、冷たい土となっていく。 部族を取りまとめるレグバ姫の側近のドイハとヤムリアの話を聞いていたミラーボール団長は改めて2人に聞き直した。 「で、何をすればいいんだっけ?」天気に似…

ヴォーダン・ゲーム 中編

木製の風車がからからと音を立てて回ると、隣にある竹でできた筒からシャボン玉が出てくる。シャボン玉は数秒ほど空気に漂うと天まで昇らずに破裂した。 そんな様子を部族の中で1番若い少年、サムディが珍そうに眺めている。手を伸ばして泡に触れようとする…

ヴォーダン・ゲーム 前編

サーカス列車の寄宿車両を大きなおもちゃのラッパの音が響き渡る。 「ほら!!みんな起きて起きて!次の世界に付く頃だよ!」 ミラーボール団長だ。吹いているのは小さな子供が遊ぶようなおもちゃのラッパだが、その音は耳を劈くほど大きくて騒がしい。団長…

電気狼はアンドロイドの夢を醒ますか?

ミライ、ミライ。これは今よりも少し未来の出来事です。 人類は皆、完璧なAIが管理する「夢のマシン」の中で幸福な夢を見ていました。実際の仕事は全て身代わりロボットに任せてAIが魅せてくれる幸福な夢の世界は現実での辛いことを忘れさせ、願ったことは全…

Menageie 後編

アイスを売るのにも慣れてきて3日経った。毎日広場には屋台を楽しんだり動物を見に人だかりができていた。たまに赤いインコがアイスを奪いに来る以外は特に変わったこともなくサーカスの公演初日が近づいてきた。 私は午前中トムと一緒にアイスを売り、午後…

Menagerie 中編

ピエロ達の中心でなんとか教えてもらった振りを踊っていると、突然空間が揺れて傾き出した。そういえばここは電車の中だった。動きに合わせて列車の前方部分に滑っていく。 「これは、電車が止まったな。」 マッシーが呟いて練習場のドアを開けて外に出た。…

Menagerie 前編

紫色の煙が蛇のように天井へ巻き上がる。ただ薄明るいだけのここは樽やなめし皮のような香りが鼻腔を貫く。 一筋の煙の中にジャスミンやラベンダーが香る灰色の煙が混じる。 「ちょっと失礼するぜ。」 声の主は葉巻を加えながら煙管を吸っていた先客に許可を…

爬虫類の夢

これはきっと簡単な話だったのだ。 終わりのない世界に生きるオレ達はそのまま進化して進化して進化して、それぞれの生命を統べる「モノ」となった。 わかりやすいように、ここでは「モンスター」とでも呼んでおこうか。 オレは全ての爬虫類を複合したモンス…

巡る天使の輪の中で

巡 -JUN- 絶対に消せないものって何だかわかる?ワタシにとってそれは関係性だと思う。 あの人とあの人が友達だった。あの子はあの人を好きだった。そういったことっていくら本人達が無かったことにしたくても誰かが覚えていればその人達の関係性っていうの…

運命の靴

その列車は車両ごとに様々な色をしていた。1両目は黒を基調としているが側面は赤い。大きな煙突が付いており、列車の1番前の突き出た筒状の部分はミラーボールでできていた。ミラーボールの真ん中にはよくわからないが赤い羽のシルエットが映っている。 私は…

約束の日

例えば今この瞬間に地面が割れて太陽がなくなっても私は走ることを簡単にやめられないだろう。 走るのが好きだから走っているのではない。そうしなければならないから、そうするしかないのだ。 世界が終わるような壮大なことを考えているけれどこれは部活だ…

始まりの鏡

かつて光しかない空間があった。 空間は永く存在しているうちにこう考えるようになった。 「自分は何者なのか?」 その時空間は一つの実態を形成した。それは鳥の姿だった。 鳥とは言ってもその姿は右側の翼だけ。足は2本、頭に角があり目は一つしかなかった…